2巻まで『私の百合はお仕事です!』を読んだ話

今期アニメが始まってそろそろ1か月ですね。

面白いアニメは色々とありますが、アニメ全般の話はまたの機会に譲るとして、今回は『私の百合はお仕事です!』(わたゆり)の話にフォーカスします。

 

以前に、わたゆりの原作1巻2巻は読んでいたので、アニメ見ても「知ってる知ってる~」という感じだったんですが、回を追うごとに気分が乗ってきたので、この間漫画を読み直してしまいました。

ていうか、EDが良いんですよね。陽芽と矢野のデュエットえもすぎ。YouTubeで公式が出してるから、皆も『夢が覚めても』で検索して聞いてくれ。

 

 

ということで、2巻まで読み直した感想などのまとめです。アニメはまだ放送しきっていませんが、たぶん今のペースだと6話前後までに対応する内容になるかと思います。知らんけど。

 

 

以下、内容。

 

 

 

【この記事は『私の百合はお仕事です!』漫画2巻までのネタバレを含みます】

 

 

 

 

 

ああ~、俺ももし美少女に生まれ変わったら、

自分の可愛さを活かしてそつなく人生をこなしつつ、

小学生のときにクラスの委員長的な生真面目な女の子と

めちゃめちゃ仲良くなって、

でも何やかんやあって仲違いして

離ればなれになるんだけど、

高校生になったときにひょんなことから

美人になった彼女と再会して、

初めはお互いいがみあっているんだけど、

最終的にはお互いのすれ違いを解消して、

大勢の人前で「あなたが好きよ」って言われて

仲直りして~~~~~

 

劇的すぎるだろ。

現実にねぇよ、そんなこと。(これは褒め言葉です)

 

話の作りが上手すぎるんですよね。

回想と現在の人間関係がパズルのようにカチカチッと嵌まっていって、最終的に綺麗な人間ドラマが出来上がっていくという。

まあ逆にいうと、2巻まで読まないと話が完成しないという側面があって、そこまでは読者がついていかないといけないところではあります。

巷で「わたゆりはとりあえず二巻まで読め」と言われている所以ですね。

とはいえ本来的には読者にそんな義理はないわけですが、僕が昔買ったときは二巻までKindleで無料とかだったんですよね、確か。だからちょうど良かった。今はどうなんでしょう。

まあとにかく、お互いの人生に深い爪痕を残した別れから、n年経て再会して、劇的に仲直りする話ということで、美しすぎる話でした。

 

 

じゃあもうちょっと細かい内容に入っていきますか。

 

今回の話で重要なところは、「嘘をつく」ということの意味なんですよね。

普通、「嘘をつく」というのは良くないこととされているわけですが、まあ人間色んなところで嘘をつくわけですよ。それにはそれなりの目的があって、嘘をつくリスクやコストに比べて得られるリターンが大きいから嘘をつくんですよね。

主人公の陽芽の場合は、「自分の可愛さを活かして、億万長者と結婚して玉の輿をする」という最終目標があって、そのために、誰からも愛されるために皆に演技(ソトヅラ)を見せています。

まあ本当にコストと見合っているのかは怪しい気もしますが、そのおかげで周りの人からはちやほやされて、本人としては納得の人生を送っています。

それを読んでいる読者としては、こいつ腹黒いやつだな~と思いながら読み進めていくことになるわけです。

で、実際腹黒いのはマジでそうというか、2巻最後まで読んでも印象が変わることはありませんが、でも2巻9話で陽芽自身が気づいている通り、そういう嘘・演技には本人の気持ちがこもっているんですよね。

 

「誰からも愛されたい」「あのおねーさんに好かれたい」という目的のために嘘をつくコストを支払っているわけで、その相手に対する思いには一周回った誠実さのようなものがあると言えます。

まあそもそも理想の自分に近づこうとすることの何が悪いんだいという話でもあるかもしれませんね。

 

「嘘は何でも悪い」みたいな道徳律でいるとちょっとハッとさせられるというか、相手を思うおもてなしと相手を陥れるような嘘の間にはグラデーションがあるだけなんだよな、という部分で気づきのあるお話でした。

(こういうのって「嘘も方便」とか「優しい嘘」とか、実情に即した正当性のある嘘を表わす言い回しが色々あって、それの類型でしかないと言えばそれまでなんですけど、こういう風に漫画で何十ページに亘ってそれを提示してもらえるという、それだけで良さがあると感じます)

 

だから結構陽芽って人間臭くて、読んで行くにつれて親近感が湧いてきちゃいますね。